実証 02 地下埋設物の3D化による業務改善効果検証
地中の様子を3Dで把握し、
生活を支える
ライフラインを管理
概要
高精度な地下埋設物3Dモデルを作成し、それを活用した地下埋設物の管理の高度化を検証します。
上下水道、電力、ガス、通信などの地下埋設物の設備図面をもとに高精度な地下埋設物3Dモデルを作成し、レーダー探査により取得した3Dモデルとの比較により位置精度の検証を行います。
また、構築した地下埋設物3Dモデルを活用し、地下埋設物の管理に関連した業務(埋設物照会、協議等)がどの程度高度化されるかを検証します。
目的
- 地下工事実施の際の設備事故発生を減らし、人々に安全安心な暮らしを提供する。
- 地上部の3D都市モデルと地下の3Dモデルを組み合わせることにより、地下の施工状況がどのように地上部へ影響を与えるかを把握する。
実施エリア 錦糸町駅北側エリア
実施スケジュール
- 2021年10月まで
- インフラ管理者の地下埋設物データ収集
- 2021年12月まで
- 位置統合処理・3Dモデル化
- 2022年2月まで
- 埋設物管理業務の高度化検証
- 2022年3月まで
- 成果とりまとめ
地下埋設物3Dモデルの構築・表示
上下水道、通信、電力、ガスの各団体が提供するGISデータ、CADデータ、紙図面等様々なフォーマットのデータについて、フォーマットの変換、高精度3D空間情報を活用した位置情報の特定・補正、高さ情報・属性情報の付与等を行い、高精度な地下埋設物3Dモデルを作成し、3Dビューアに可視化しました。
地下埋設物3Dモデルの構築手順
3Dモデル構築における主な課題
3Dモデル構築の各課程において発生した課題とあるべき姿を整理しました。
3Dモデル構築プロセス
課題 | あるべき姿 |
---|---|
フォーマットの不統一(紙図面、特殊なGISデータ等) | 共通フォーマットのGISデータとして管理 |
基準点情報の不足 | 設備事業者間で共有可能な基準点を設ける制度設計 |
測地系の混在 | 現行測地系(JGD2011)でのデータ整備 |
地下埋設物3Dモデルの精度検証
地下埋設物3Dモデルを構築したエリアにおいて、レーダーによる埋設物探査を実施し、実際の埋設状況を図化(モデル化)しました。このモデルと図面ベースの3Dモデルの比較により、3Dモデルの精度の検証、活用に向けた課題の把握を行いました。
具体的には、アレイ型レーダー※1を搭載した探査機を使用し、現地で地下埋設物の位置の計測を行いました。計測に際しては事前に各社から提供された図面情報等を確認し、管路の埋設方向や深さ等も考慮しながら実施しました。
また、アレイ型レーダー搭載の探査機に加え、シングル型地中レーダー搭載の探査機(従来型)も使用し、アレイ型レーダーの活用可能性や適用限界等も確認しました。
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アレイ型レーダー
1つのアンテナ内に複数のチャンネルを有し、高密度な地平面分布データを取得できる。従来型のレーダーに比べて、少ない走査回数で見落しの無い連続的な探査が可能。
計測の様子と計測結果
測定による埋設状況と図面ベースの3Dモデルとの差異を検証した結果、数十cm~最大1m程度の位置のズレや図面には含まれていない不明管の存在などの課題を把握できました。
また、アレイ型レーダーの探査結果とシングル型レーダーの探査結果を平面、深度の2つの観点で比較した結果、いずれにおいても誤差は数cm~最大20cm程度であり、アレイ型レーダーの活用可能性が確認されました。
埋設物照会・施工協議の効率化検証
構築した高精度な地下埋設物3Dモデルを活用することにより、地下埋設物を管理している企業・団体が実施している業務(埋設物照会、施工協議等)がどの程度高度化されるかを検証し、3Dモデルの業務活用の可能性を検討しました。
設備照会方法の効率化検証
埋設物照会においては通常掘削業者が占用事業者ごとに個別に設備有無の調査依頼を行っています。本実証では、地下埋設物3Dモデル上で一元的に申請し、申請を受けつける占用業者側では地下埋設物3Dモデル上で設備有無の判定を容易に行える仕組みの導入可能性を検討しました。
検証の結果、申請、受付それぞれに要していた時間等の大幅な削減に貢献できることが確認されました。
施工協議の効率化検証
高精度3Dモデルを用いた施工協議の効率化検証として、実際に施工協議デモを行い、掘削範囲のモデル化や干渉箇所の確認等、オンライン施工協議に必要な機能や運用方法などについて整理しました。
検証の結果、施工協議への活用という観点では精度・鮮度の不足、周辺情報(地上、地盤等)の不足等、いくつかの課題も見受けられましたが、空間把握が容易である3Dモデルは、工事前の計画段階での活用や現地での認識共有等への活用可能性が示唆されました。
実証成果・今後の課題
本実証により、以下が明らかになりました。
実証成果
- 上下水道、通信、電力、ガスの各団体が独自のフォーマットで管理する地下埋設物データについて、フォーマットの変換・統一を行い高精度な地下埋設物3Dモデルを構築した。構築の過程の中で、測地系の混在や高さ情報の定義の不統一等の課題を確認した。
- 構築した地下埋設物3Dモデルと地下計測結果との比較を行い、図面との位置のズレや図面には記載されていない不明管の存在を確認した。
- 構築した地下埋設物3Dモデルを用いた業務効率化検証を実施し、埋設物照会、現地での認識共有等における活用の可能性、施工協議等に向けた改善点等を確認した。
地下埋設物3D化実装上の課題・今後の方向性としては、以下が挙げられます。
技術面
- 課題
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- 地下埋設物本体のデータの充実(管種、管径等)
- モデルの精度・鮮度の向上
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付帯データの充実
- 地上部データ
- 工事データ
- 地盤データ
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機能の充実
- 断面図、工事範囲の表示
- 設備有無、干渉の自動判定
- 今後の方向性
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- 業界でのデータ整備の規格の統一
- 厳密な精度・鮮度が求められないユースケースの模索(計画段階での活用等)
- 点群データ等の活用による建物・道路地物・電柱・電線データ等の取得、重畳
運用面
- 課題
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- 持続的な地下情報の取得・更新方法の検討
- セキュリティ面の配慮
- 地下埋設物3Dモデルの運用の仕組み(運用主体、関係機関との役割分担、データ連携、財源の確保等)の検討
- 今後の方向性
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- 工事時のLiDAR活用による3D点群データの取得
- 計測機器の高度化
- 関係者のみが利用できるシステム環境の構築
- 関係機関の役割分担、運用体制の構築